仕事のモチベーションを下げる原因と上げる方法:ヘッダー

理由は分からないけど、仕事のやる気が起きない、モチベーションが上がらない、何を目標に頑張ればいいのか分からない。「始めはやる気と充実感に満ち溢れていたのに、いつのまにか燃え尽きたようにモチベーションが上がらなくなってしまった」と感じている人も多いのではないでしょうか?

そこで今回は「仕事のモチベーションを上げる考え方」を、モチベーションが上がらない原因やいくつかの心理実験などを通して、ご紹介していきたいと思います。やる気を引き起こすため、充実感を得るため、楽しく仕事をするために、少しでも参考にしていただけたら幸いです。

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仕事のモチベーションを上げるためには

 

 

仕事のモチベーションを下げる交換条件

仕事のモチベーションを下げる交換条件

実績を認められ賞状をもらう、頑張ったご褒美にお小遣いをもらう、などのように行った事に対しての見返りとして「報酬」を受け取るのは嬉しいかぎりです。しかしながら、このような報酬が、必ずしも今後のモチベーションアップに繋がるとは限らず、むしろモチベーションを下げてしまうことが考えられています。

心理学者のマーク・レッパーとデイビット・グリーンらは、幼稚園児のお絵かきを観察しました。彼らは、自由遊びの時間に絵を描いている子供たちを3つのグループに分け、報酬を与えることによる影響について調査しました。3つのグループ分けは以下のようになっています。

  • それぞれの子供に「よくできました」と書いた賞状に青いリボンをつけて渡す。賞状には子供の名前が書いてあり、「絵を描いて、この賞状をもらいたい?」と聞く。つまり、絵を描けばこの賞状をもらえることを知っているグループ。
  • 「絵を描きたい?」とだけ聞き、子供たちが絵を描き終えると「よくできました」と書かれた賞状をもらえる。つまり、賞をもらえることは知らないグループ。
  • 「絵を描きたい?」と聞くところまでは同じだが、賞をあげることも伝えず、描き終えても賞状を渡さなかったグループ。つまり、何もしなかったグループ。

2週間後の子供たちを観察したところ、賞をもらえることを知らなかった子供たち、何ももらえなかった子供たちは、調査前と同じくらい熱心に絵を描く様子がみられました。しかし、賞をもらえることを知っていた子供たちは、調査前に比べて目に見えて絵を描くことに興味を失い、絵を描く時間も大きく減少していたのです。

なぜこのような事が起きてしまったか?注目すべき点は、報酬自体にモチベーションを下げる効果があるのではなく、事前に報酬を与えることを伝えることで、自発的なやる気を損なってしまう点です。「これをしたら、あれをあげる」といったような交換条件つきの報酬を提示することで、モチベーション低下を引き起こしたと考えられています。

もちろん、これは子供たちだけに起こることではなく、大人でも同じことが言えるでしょう。その後の調査によって「具体的な報酬は内発的動機づけに対して、実質的にネガティブな影響をもたらす傾向にある」という結論に至っています。つまり、モチベーションを上げるために提示した報酬が、反対にその後のモチベーションを下げてしまうことが懸念されているのです。

子供に勉強をさせようとして、宿題が終わるごとにお小遣いを与えていれば、短期的には一生懸命に勉強するかもしれません。ですが、長い目で見た場合、その子供が勉強すること自体の興味を失ってしまうことが考えられます。「この案件が成功すれば、臨時ボーナスを与える」と上司から伝えられれば、少なくともその仕事に関わっている期間はやる気が出るはずです。しかし、長期的な仕事への興味を考えれば、やる気を損なうマイナスの要素にもなりかねません。

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高額の報酬が仕事のモチベーションを上げるとは限らない

高額の報酬が仕事のモチベーションを上げるとは限らない

仕事へのモチベーションが上がらない理由として、「経済的な報酬が少ないこと」を原因だと思っている人も多いのではないかと思います。しかしながら、「高額な報酬が与えられれば、モチベーションが上がる」とは言い切れないようです。

インドで行われた「外発動機づけが及ぼす成果への影響」を研究した調査があります。これは、87人の参加者を3つのグループに分け、運動神経や創造性、集中力を必要とするゲーム(文字の置き換えや、数字の暗記)をしてもらうというものでした。3つのグループは、成功報酬として以下の金額を提示されています。

  • 成功報酬4ルピーを提示されたグループ。(1日分の賃金に相当)
  • 成功報酬40ルピーを提示されたグループ。(2週間分の賃金に相当)
  • 成功報酬400ルピーを提示されたグループ。(5か月分の賃金に相当)

普通に考えれば「成功報酬の金額が増えるほど、集中して意欲的に取り組み、成績も良くなるはずだ」と誰しもが考えるのではないでしょうか?ですが、結果は大きく予想を裏切るものでした。

最も成績が良かったのは4ルピーを提示されたグループで、40ルピーを提示されたグループはそれよりも劣っていました。さらに、最も成績が悪かったのが400ルピーを成功報酬として提示されたグループで、9つの課題のうち8つもの課題で最下位となったのです。

この実験結果から「経済的なインセンティブ(人の意欲を引き出すための、外部から与える刺激)は、全体的な成績に悪影響を与えるおそれがある」とも言われています。つまり、高額な報酬を与えることが、必ずしも良い結果を残すことに繋がるとは限らないのです。

 

クリエイティブな仕事のモチベーション

クリエイティブな仕事のモチベーション

その他にも、テレサ・アマビール博士らが行った、23人のプロの芸術家を対象にした興味深い実験があります。この芸術家たちは、自主的に創作するときもあれば、注文を受けてから制作する場合もありました。この自主的に創作した作品と、依頼されて制作した作品を無作為に提供してもらいます。これらの作品を、調査内容を知らせていない芸術家や学芸員たちに、創造性や技術面について評価をしてもらったのです。

結果は、技術面における評価の違いはなかったものの、創造性の面では「依頼されて制作した作品」は、はるかに劣ると評価されました。また、制作した芸術家たちは「他人のために作品を制作しているときは、喜びを感じるというよりも、仕事をしていると感じることが多い」とも述べています。

また別の調査では、外的な報酬への関心が、芸術家としてのその後の成功に悪影響を及ぼす可能性があるとしています。美術大学の学生を対象に、動機が外発的か内発的であるか調べ、その後のキャリアを追跡調査しました。すると、特に男性グループは「学生時代における外発的な動機づけが低いほど、その後プロとして成功する割合は高くなる」という驚きの結果が出たのです。

もちろん、このような結果が全ての仕事に当てはまるわけではなく、クリエイティブな仕事や作業などに対して、悪影響を及ぼすと言われています。しかしながら、どんな仕事においても柔軟な発想や解決策を求められる場面は多々あります。外発的な動機によって、視野が狭くなり、冷静な判断ができなくなる傾向には注意する必要があるでしょう。

 

仕事のモチベーションを上げる目標設定の注意点

仕事のモチベーションを上げる目標設定の注意点

私たちは小さい頃から、目標を持ち、それを達成するために励むことの大切さを教えられてきました。何事にも高い目標を持って取り組むことで、情熱を絶やさずに仕事ができるという考え方は間違っていないはずです。

しかし、多くのビジネス・スクールや大学の研究者らは「他人から設定された目標については慎重に検討すべきだ」としています。つまり「自ら目標を設定して取り組む姿勢は健康的であるものの、他人から設定された目標については思わぬ悪影響を及ぼす可能性がある」ということです。

成功報酬を事前に提示することで、長期的なモチベーション低下を招く危険性があることをお伝えしました。それと同様に、外部から課せられた目標が一時的には効力を発揮するものの、長い目で見たモチベーションやパフォーマンスの低下する可能性があります。その課せられた目標が短期的であり、見返りとしての報酬が大きくなるほど、視野を広げて物事を捉えることができなくなると考えられているのです。

また、作業効率の低下を招くだけではなく、ときに倫理に反する行動に出る場合もあります。営業の仕事でノルマを課せば、社員の中には顧客に不当な水増し請求を、あるいは会社が社員の自腹購入を強要してくるかもしれません。商品を納期する期日や売り上げにこだわるあまり、サービスの質の低下を招いた、思わぬ不具合が生じた、なんてことも考えられます。

短期的な利益のみを見据えた外部からの目標によって生じる問題は、それを達成するために手段を選ばない人間が表れることです。留年しないためにカンニングする学生も、記録を伸ばすためにドーピングするスポーツ選手も、粉飾決算する企業も、短期的な利益のみを追い求めてしまい、視野が狭まった結果だと言えます。

もちろん、外部から設定された目標自体が悪いわけではありません。設定された目標によって生じる不利益(モチベーションやパフォーマンスの低下、倫理に反する行動)には十分に注意する必要があるということです。

今の仕事で自分が学びたいこと、習得したい技術、やり遂げたい事、などを個人の目標として持つことで、違った視点からモチベーションを上げることができると思います。それと同時に外部から課せられた目標に注意を向けることができれば、継続してやる気を出すことができるはずです。

 

仕事のモチベーションを上げる大きな目標

仕事のモチベーションを上げる大きな目標

アメリカの国会議員であるクレア・ブース・ルースは「偉大な人物は、一文で記述できる仕事を残している」と述べています。エイブラハム・リンカーンなら「奴隷を解放した」、フランクリン・ルーズベルトなら「大恐慌から国民を救った」など。

もちろん大きな目標を持ち、偉業を成し遂げる必要も、一国の大統領である必要もありません。ですが、何をすべきか迷ったとき、こういったシンプルかつ大きな目標に原点回帰することで、自分がこれから取り組むべき問題を見つけられるはずです。

自分がなぜ今の仕事を選んだのか?生涯を通して何に取り組みたいのか?もし自分を表す一文を作るとしたら、それはどんな言葉になるのか?もちろん、その人によって表される言葉は様々です。

例えば、家族を幸せにする、子供を一人前に育てる、人の役に立つ商品を開発する、顧客が満足するサービスを提供する、国民の安全を守る、病気で苦しむ人たちを救う、自分がデザインしたもので人を喜ばせる、などがあるでしょう。

自分の信念を持っている人は、外的な報酬に惑わされず、優先すべき事を見つけるのが得意です。もしも、やる気が起きなくて困っているのなら、「自分を表す一文」を考えてみてください。シンプルな目標であるほど、広い目で物事を捉えることができるはずです。

 

大きな目標を達成するための小さな目標

大きな目標を達成するための小さな目標

大きな目標を掲げることも重要ですが、それと同じくらい小さな目標を達成していくこも重要です。いきなり42.195kmのフルマラソンを走れるようになるわけでも、一夜にしてノーベル賞を受賞できるわけではありません。大きな成功をおさめている人ほど、見えないところでは、多大なる努力をしています。

小さな目標には、無理なことではなく、かといって簡単すぎない、少し苦労するような事をオススメします。そして、一日の終わりに「昨日よりも今日の自分は少しでも成長できたか?」と、問いかけてみるのもポイントです。

営業のコツを学ぶために心理学の本を読んだ、コミュニケーション能力を向上させるため普段話さない人と交流した、健康的な生活習慣を意識して早起きした、などのように具体的に成長するために行ったことを振り返ることです。

またすべてを完璧にこなそうとする必要はありません。完璧主義者であるほど、いつまでも失敗を引きずったり、立ち直るのに時間がかかったり、小さな成長を認められなくなるものです。

仕事のモチベーションが上がらないとき、心にゆとりを持つためにも、「休むことも仕事のうち」と割り切って考え、自分にちょっとしたご褒美を与えることで継続して取り組むことができるでしょう。

関連記事:日常生活で使える心理学テクニックのまとめ

 

抱いた目標によって仕事のモチベーションも変わる

抱いた目標によって仕事のモチベーションも変わる

ある調査では、目的志向の目標(誰かの役に立ちたい、自ら学び成長したいなど)を抱いた学生たちと、利益志向の目標(金持ちになりたい、有名になりたいなど)を抱いた学生たちの卒業後の足取りを調べました。

結果は、学生時代において目的志向型の元学生たちは、目標に一歩ずつ近づいているという実感を持ち、大きな満足感や幸福感を持っていました。また、不安や落ち込みといったネガティブな感情もあまり抱かない傾向にあることが分かりました。

一方、利益志向型の元学生らは、学生時代に比べ、満足感や幸福感に大きな変化はありませんでした。ですが、目標を達成しているのにも関わらず、不安や落ち込みといったネガティブな感情を抱いていたことが分かったのです。

つまり、大きな目標を掲げたとしても、方向性を間違えてしまえば、頑張れば頑張るほど負のスパイラルに陥ってしまうことが考えられます。「お金が全てではない」なんてキレイごとを言うつもりはありませんが、やりがいのある仕事にするためには「金銭的な報酬以外のもの」を必要とするはずです。

個人としての目標も大切ですが、個人の集まりである組織の掲げた目標にも注意を向ける必要があります。いくら素晴らしい言葉で目標を設定したとしても、それに相反する行動(短期的な利益の追求、コスト削減によるサービスの低下など)が行われていれば、社員の仕事へのモチベーションが下がるのは当然の結果だと言えます。

経済的な報酬は、あくまで目標を達成するため手段や方法に過ぎず、それを動機にしてしまうと思わぬ代償を払うことになります。時間を忘れ、集中し、さも遊んでいるかのように仕事を楽しむためにも、人生の欲求を満たせる「人間的な目標」が必要だと言えるかもしれません。

以上が「仕事のモチベーションを下げる原因と上げる方法」になります。仕事のモチベーションが上がらないときほど、視野は狭くなり、大切なことに目を向けなくなることが多々あります。テクニカルな技術で、やる気を起こすこともできますが、根本的な方向性が間違っていると、いつかは燃え尽き、思いもよらぬ悪影響を及ぼす場合もあるでしょう。

自分の価値観を尊重し、モチベーションを上げることができる目標を持っていただけたら幸いです。最後までご覧いただきありがとうございました。

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