営業のコツとして使える心理テクニック12のまとめ:ヘッダー画像

契約をたくさん取りたい、営業成績をもっと伸ばしたい、顧客の信頼を得たい。営業マンとして仕事をしていると誰もがこんなことを考えるのではないでしょうか。

いざ頑張ろうとしても、やる気が空回りしてしまった、何をすればいいか分からない、などのように悩むこともしばしばです。

ですが、ちょっとした心理テクニックを応用することで、意外な効果を発揮することがあります。自分の印象を良くするコツ、相手の気持ちを読み取る方法、上手く伝える話し方などが分かれば、自分にしかない営業の武器として大いに役立つはずです。

そこで今回は「営業のコツとして役立つ心理テクニック」をまとめてご紹介していきたいと思います。

これから営業職に就く方に、もっと売り上げを伸ばしたいと思っている方に、人間関係を広げたいと考えている方に、少しでも参考にしていただけたら幸いです。

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明日から使える営業のコツとは

 

 

1.初頭効果

営業のコツ①:初頭効果

ビジネスマンとして見た目に気を配るのは基本的なことだと言えます。特に重要なのが第一印象です。心理学的にも人は最初に与えられた印象に強く影響されることが分かっており、これを初頭効果と呼んでいます。

心理学者のアッシュは被験者にある人物の性格を表したリストを2種類用意し、その人物に対する印象を調査しました。リストの内容は以下のようになっていました。

  1. 彼は「知的・勤勉・強力・批判的・頑固・嫉妬深い」な人物です。
  2. 彼は「嫉妬深い・頑固・批判的・強力・勤勉・知的」な人物です。

よく見れば分かるように、伝えている特徴については同じもので、2つ目のリストは伝える順番を逆にしただけのものです。

しかしながら、「知的」という望ましい特徴から伝えられた場合は「多少の欠点はあるが、能力のある人」という印象が、「嫉妬深い」という好ましくない特徴から伝えられると「他の欠点のため、能力が発揮できない人」という印象を持たれる傾向が分かったのです。

また、髪型や服装といった外見に気を配ることも大切ですが、ニオイにも注意しておきたいところです。人に会う前はタバコを控える、香水をつけすぎないようにする、体臭をチェックする、などなど特に初対面のときは意識する必要があると言えます。

 

2.単純接触の原理

営業のコツ②:単純接触の原理

たくさん会えば会うほど好感度が増すことを「単純接触の原理」と言います。人は初めて会う人物には緊張し警戒してしまうものです。何度も会うことで相手が「見慣れた顔」になり、好感を持てるようになるのも自然なことだと言えます。

心理学者のザイアンスは被験者に人物の写真をランダムに見せ、人物によって写真を見せる回数を変えました。すると、見せる回数が増えるごとに、好感度もそれに比例して高くなるという結果が出ました。

全ての顧客に対して何度も会いに行くのは効率的だとは言えませんが、「どうしてもこの人に購入してもらいたい」という相手には効果的かもしれません。あえて営業マンとして売り込むことはせず、ただ世間話をしに行くのも良いかと思います。

しかしながら、上の実験では、写真を見せる回数が10回以上になると、好感度には変化が見られなかったそうです。つまり、10回以上会っても相手に購入するつもりがないと分かれば、見切りをつけて諦める必要があると言えるかもしれません。

 

3.好意の返報性

営業のコツ③:好意の返報性

好意の返報性とは、人は相手から向けられた好意と同じくらいの気持ちを返そうとすることを意味します。つまり、与えられた好意に対して同じ量の「お返しをしよう」と考えるのが人の心理なのです。

営業の仕事に限らず、ビジネス全般において相手から好感を持たれるのはとても大切なことです。自分の印象を良くするためにも、自分の好意を上手く相手に伝えられるかどうかが鍵になると言えます。

好意の返報性の分かりやすい例にデパートなどの試食があります。「味見をしてもらう」という役割もありますが、試食させてもらったお返しとして購入しようと考えるわけです。

ビジネスの場合、相手の良い所を見つけ、さりげなく褒めることで好意を持たれやすくなります。相手がオシャレな時計をしていれば「○○のブランドですよね?実は私も好きなんですよ」などのように共通点を持つことで一気に距離が縮まるはずです。

あるいは「○○さんがオススメしてくれたケーキ屋さん、すごくおいしかったです!」などのように過去の会話から得た情報を活かしてみるのもいいでしょう。

物を売り込むテクニックも大切ですが、まずは自分を売り込むことを意識してみると良いかと思います。「この人がオススメする物なら」と人を見て購入を考えることは多々あるはずです。

 

4.ハロー効果

営業のコツ④:ハロー効果

ハロー効果とは、ある際立ったひとつの特徴から、他の要素までもよく見える効果を意味します。例えば「某有名大学出身です」とか「企業の役員をしています」といったことが、「仕事ができる」や「性格がいい」などの他の評価も底上げされることがあります。

その他にも、CMなどに好感度の高い芸能人を起用するのもハロー効果です。印象が良い、可愛い、カッコイイといった好印象の人物と一緒に商品を売り込むことで、その商品自体の評価も上がるというわけです。

また残念なことに、この効果は詐欺事件などにもよく使われてしまいます。「某有名会社の役員をしていました」と伝え出資金を募ったり、ありもしない投資話を持ち掛けるのです。

際立った特徴は人に限らず、物に関しても同じことが言えます。高いワインがおいしく感じるのは「その銘柄が有名であり、値が張るという事実を踏まえた上で飲んでいるから」という調査結果もあるほどです。

営業のコツとして応用するのであれば、商品を丁寧に扱うとか、少し高級なケースに入れて紹介するといったことができるでしょう。また顧客の信頼を得ることができれば「この人が紹介する商品は間違いない」と思ってもらえるはずです。

もちろん、見た目ばかり良く装うのはNGです。中身が伴っていなければ「あの人の紹介する商品はいつも質が悪い」と信頼を失うことに繋がります。ちょっとした「商品を良く見せるテクニックとして応用する」くらいの気持ちでためしてみてはいかがでしょうか。

 

5.アンカリング効果

営業のコツ⑤:アンカリング効果

ある計算問題に対して「紙とペンも計算機も使わずに以下の計算を5秒以内で答えを出してください」とお願いし、答えとして出た数値の平均を調査した実験があります。

  • 1×2×3×4×5×6×7×8の答えは?
  • 8×7×6×5×4×3×2×1の答えは?

最初の「1×~」から始まった計算式については平均して「512」という結果に、次の「8×~」から始まった計算式に関しては平均して「2,250」という驚きの結果が出たのです。(ちなみに正解は40,320)

人は最初に印象に残った数字や言葉が、後の判断に影響を及ぼすと考えられており、これを「アンカリング効果」と呼んでいます。

つまり、上の数式の場合は、最初の数字が頭の中で基準点の役割を持ち、小さい数字から始まれば答えも小さく、大きい数字から始まれば答えも大きくなったというわけです。

営業や販売のコツとしても広く使われており、バーゲンセールなどでも目にすることがあります。わざわざ商品の定価を記載し、値引きされた価格を提示するのも「最初に印象付ける数字を高くし、実際の価格を安く感じてもらう」といった心理効果があります。

セールス販売ならば最初にあえて高額な商品を紹介し、徐々に価格を下げて他の商品を紹介するという手法もできるでしょう。車や住宅といった大きな買い物の場合も、本体価格を最初に提示してからオプションを持ち出すことで、お得感が増すと言えます。

 

6.フレーミング効果

営業のコツ⑥:フレーミング効果

営業トークのコツを知ると、言葉の力がどれほど影響力を持っているのか実感することがあります。例えば、同じ重さであっても「鉛10㎏」と「綿10㎏」とでは、何となく綿の方が軽く聞こえてくるような気がします。

伝え方ひとつで商品の売れ行きが変化するように、ちょっとした言葉に注意するだけで、相手の受け取り方も大きく変わります。例えば、以下のような2種類の牛乳があったとして、どちらの方を飲みたいと思うでしょうか?

  • この牛乳には30%の脂肪が含まれています。
  • この牛乳の70%は脂肪が含まれていません。

よくよく考えてみれば、どちらも3割は脂肪を含んでいると言えます。ですが「脂肪が含まれている」と言われるよりも「脂肪が含まれていない」と言われた方が何となくカロリーが少なく感じ、ダイエットをしている人であれば後者を選ぶのではないでしょうか。

このように人が何かの選択をするとき、その絶対的評価ではなく、自分の基準に当てはめて別の判断をしてしまうことを「フレーミング効果」と呼んでいます。絵の額縁(フレーム)が立派であれば、その絵の価値も高いと思う人の心理を意味します。

営業トークのコツとして応用するのであれば、商品を紹介する際に、ちょっとした言葉遣いに気を配ることです。できるだけポジティブな印象を持ってもらえるような言い方をするだけで、商品自体がより魅力的に感じられるはずです。

 

7.ピーク・エンドの法則

営業のコツ⑦:ピーク・エンドの法則

人が自分の経験を振り返るとき、その絶頂時はどうだったのか(ピーク)、終わりにどう感じたのか(エンド)の2点を重視することを「ピーク・エンドの法則」と呼んでいます。

例えば、被験者たちに「うるさい音」を聞いてもらうという実験があります。被験者たちは2種類の音を連続して聞き「もう一度繰り返すならどちらの音を選びますか?」という質問をされます。(2種類の音は以下のように)

  • 【1回目】78デシベルの音を16秒間
  • 【2回目】78デシベルの音を16秒間、続けて66デシベルの音を8秒間

普通に考えれば「苦痛を感じる音をできるだけ短くしたい、だから1回目の音を選ぶに決まっている」と思うはずです。しかしながら、実際に経験した被験者たちの多くは、うるさい音が長く続く2回目を選んだのです。

「終わりよければ全てよし」という言葉があるように、最後にとっておきの情報を与える、あるいは契約を断られたとしても、去り際に良い印象を与えることができれば、後日に再度話しを聞いてもらえることもあるでしょう。

商品を売り込む際にも、本当に買ってもらいたい商品、あるいは特にオススメしている商品を最後に紹介することで、より印象深くなるはずです。「そういえば、最後に紹介してくれたアレまだある?」と気にかけてもらえれば、購入までもう一息だと言えます。

 

8.黄昏効果

営業のコツ⑧:黄昏効果

人の体内リズムが一番不安定になるのが「夕暮れ時」であり、思考力や判断能力といったことが低下すると言われています。これは「黄昏効果」と呼ばれるもので、正確な判断能力を必要とする仕事はできるだけ午前中に行う方が良いと考えられます。

しかしながら、判断力が鈍る、注意力が散漫になる時間というのは、相手を説得する場合や、商談の際には好都合なタイミングだと言えます。

特に成立させたい商談や、契約してもらいたい取引先には、相手の気が緩む夕暮れ時を狙って話しを持ちかけると効果的かもしれません。

余談ですが、この「黄昏効果」は恋愛における告白するタイミングとしても最適だと考えられています。夕暮れ時は理性よりも感情が強くなり、雰囲気も良くなるので、告白を成功させるにはベストタイミングだと言えるのでしょう。

何はともあれ、上でご紹介した「ピーク・エンドの法則」も応用して、夕暮れ時に商談を持ちかけてみると意外な効果が表れるかもしれません。「人の判断能力が鈍るときに攻める!」というのは少々ずる賢いような気がしますが、商談相手がそんな印象を持つことはほぼ無いので、気にする必要はないでしょう。

 

9.ドア・イン・ザ・フェイス

営業のコツ⑨:ドア・イン・ザ・フェイス

ビジネスにおいて営業マンがよく使う交渉テクニックに「ドア・イン・ザ・フェイス」があります。譲歩的要請法とも呼ばれ、最初に大きな要求をし、断られた後に本題の要求をすることを意味します。

人は一度断りを入れると多少なりとも相手に「申し訳ない」と感じるものです。そんな気持ちから次に要求されたことに関しては、ある程度譲歩して考えてしまうのが人の心理だと言えます。

例えば、あえて最初に購入を躊躇うような高額の商品を紹介して、「そんな高い物、買うつもりはない」と断られます。そして次に「では、こちらの商品などはいかがですか?」と本来オススメしている商品を紹介するのです。

また、ドア・イン・ザ・フェイスとは対照的に小さな要求から徐々に大きな要求をする「フット・イン・ザ・ドア」というテクニックもあります。これは最初に小さな要求を承諾すると、その後の要求についても断りづらくなる人の心理を利用したものです。

ショップ店員として応用するのであれば「まずは手頃な値段の洋服を紹介する」→「試着するのを勧める」→「その他のオススメ商品も紹介する」といった具合でしょうか。

注意しておきたいことは、ドア・イン・ザ・フェイスにしても、フット・イン・ザ・ドアにしても、あまりにも商品の値段や質に開きがあると、相手は不快に思うことがある点です。

100万円の時計を勧められた後に1万円の時計を勧められれば、不快に感じるのも当然だと言えます。ある程度のバランスを考え、本来売り込みたい商品と比較して価格設定をするべきでしょう。

 

10.営業トークとして役立つ2種類の話し方

営業のコツ⑩:説得を強める2種類の話し方

営業トークを始め、相手を説得させる、自分の意見を通すための話し方を2種類ご紹介しておきましょう。それは「クライマックス法」と「アンチ・クライマックス法」です。

クライマックス法とは、文字通り結論を最後(クライマックス)に伝える話し方です。まず始めに結論に至るまでの情報やプロセスを説明し、その後で結論を伝えます。この方法は「相手が話しに興味を示しているとき」に有効であり、形式を重んじるタイプの人や、女性の方が好む傾向にあると考えられています。

反対に「話し相手が興味を持っているか分からない」あるいは「話しの内容に興味がなさそうなとき」は「アンチ・クライマックス法」をオススメします。結論を最初に伝えることで、伝えたいことが簡潔になり、印象深くすることができます。論理的な考えの人や男性が好む傾向にあります。

営業トークとして多く使われるのはアンチ・クライマックス法で、特にオススメな情報や商品を先に伝えることで、仮に話しを途中で打ち切られたとしても、肝心な部分はしっかり伝えられます。

またクライマックス法で話す人は、同じようにクライマックス法で話す人を好むと言われています。アンチ・クライマックス法で話す人も、アンチ・クライマックス法で話す人に好感を持つ傾向にあります。相手がどんな話し方をしているのか見極めてから、2種類の話し方を使い分けてみるのも良いかもしれません。

 

11.非言語コミュニケーション

営業のコツ⑪:非言語コミュニケーション

営業の仕事が得意な人ほど話す能力に長けていると言えますが、同時に相手の心境を読み解くことが得意だとも言えます。アメリカの人類学者であるバードウィステルは個人間におけるコミュニケーションにおいて「言葉で伝わるものが35%、言葉以外のものが65%」であるとしています。

この言葉以外のコミュニケーションとは、表情・しぐさ・姿勢・動作・会話の間などが含まれ「非言語コミュニケーション(ノンバーバル・コミュニケーション)」と呼ばれています。

つまり、自分の伝えたいことを相手に伝える場合、人は言葉によるコミュニケーションよりも、言葉以外のコミュニケーションに重点を置くと言えます。

営業のコツとして応用するなら、相手が商品や契約に興味を示しているのかどうか判断する材料になると思います。購入するつもりのない相手に必死に売り込み続けるのは効率的とは言えませんし、興味を示している相手を見分けることも営業のコツと言えるはずです。

例えば「目は口ほどに物を言う」というコトワザがありますが、目の動きから相手が興味を示しているかどうか分かることもあります。

相手が話しに興味を持っていない場合、目の動きは左右に動き、話し相手に集中していない、周囲が気になっていることが考えられます、反対に興味を示している場合は、目の動きは上下に動き、相手の話しに好意や興味を持っていると考えられます。

その他にも「つま先の向き」に注目してみるのもオススメです。人は思っていることが自然と体に表れてしまうものです。話しを聞いているように見えても、つま先が出口の方を向いているのなら、もしかしたら「早く帰りたい」という気持ちの表れかもしれません。

反対に、つま先が話し手の方を向き、前傾姿勢を取っているのなら、興味を示していると考えられます。相手が興味を示していないことが分かれば別の商品を紹介する、といった対応ができるはずです。

関連記事:非言語コミュニケーションの種類と重要性

 

12.その他の営業のコツ

営業のコツ⑫:その他の心理テクニック

では最後に営業のコツとして使えそうな「ちょっとした心理テクニック」をいくつかご紹介して終わりにしたいと思います。

・ツァイガルニック効果

テレビCMなどで「続きはWEBで」や「○○で検索!」といった言葉を目にした人も多いのではないでしょうか。人は未完のモノに興味を強く持つと言われていて、これを「ツァイガルニック効果」と呼んでいます。

営業のコツとして使うのであれば、あえて当日には全てを伝えず「今日は時間も遅くなってしまったので、明日にでも再度ご説明させてください」といったことができるでしょう。また明日の仕事に少しだけ手をつけて、やる気を維持する効果も期待できます。

・ランチョンテクニック

ランチョンテクニックとは、おいしい食事を共にすることで自分の印象も良くなる効果を意味します。おいしい食事を取ると、ついつい気分が良くなるものです。どうしても取りたい大口契約のときなどは、先行投資のつもりで少々値の張るレストランを利用してみてはいかがでしょうか。

・心理的リアクタンス

営業マンの基本とも言えることに、相手の購買欲を促進させるような言葉があります。「限定○個!」とか「先着○名様まで!」といったように「今を逃したらいつ買えるか分からない」と思わせることでより魅力的な商品に思えます。

人は無意識のうちに「自分は自由だ」と思っています。そこに「在庫あとわずか!」や「最後の1点!」などの言葉をかけられると、その自由が失われるのではないかと思い、抵抗したくなると考えられています。これを「心理的リアクタンス」と呼んでいます。

何とも基本的なテクニックですが、その効果は折り紙つきです。ただし、閉店セールと銘打ってお店を開き続ければいつかは顧客の信頼を失うように、その情報が確かなものでなければ意味を成しません。目先の収益ばかり追ってしまえば、顧客の信頼という大きなものを失うのは当然だと言えます。

以上が「営業のコツとして使える心理テクニック12のまとめ」になります。営業の仕事を始めたばかりの方に、成績が伸びずに悩んでいる方に、販売の仕事を上手くこなしたいと思っている方に、少しでも参考にしていただけたら幸いです。

関連記事:仕事や勉強でやる気を出す方法6つ

最後までご覧いただきありがとうございました。

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