今回はパーソナルスペースから分かる男女の恋愛について、心理学を元にまとめていきたいと思います。
パーソナルスペースとは人が持っている「縄張り意識」のようなものです。
一般的にその大きさは下の図のように男女によって大きさが違うといわれてますが、その人の文化、知人か知人ではないか、などによってもその大きさが変化することも分かっています。
特に男女の恋愛においてもパーソナルスペースは様々な変化を表し、例えば「近ければ好意を持っている」などのように単純なものではないようです。
いくつかの心理学的実験や研究を参考に、恋愛が影響を与えるパーソナルスペースというものを解説していきたいと思います。
また、パーソナルスペースはまだまだ未解明なところもあり、「こうすれば、そうなるのか!」のような確証のあるものではないので、「へぇ~、そうなんだ」というようなスタンスで読んでいただけたらと思います。
ここでは恋愛のパーソナルスペースについて深く解説していきますが、パーソナルスペースそのものについて知りたい方は、まず「パーソナルスペース」の記事からご覧ください。(別ウィンドウで開きます)
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好きな人のそばにいたい心理
人は好きな人や仲の良い友達を見つけると、その人まで近づき、視線を合わせ、嬉しそうに話します。
恋人同士が腕を組んだり、夫婦が体を寄せ合って歩くことなどから、好きな人同士は自然とその距離が近くなることが分かります。
アメリカの心理学者メーラビアンは姿勢、動作、視線、相手との距離などに関する研究をおこなっています。
彼の研究により、男性は相手の性に関係なく好きな相手に接近し、女性は同性の好きな相手に対してより接近する事が分かっています。
また座って話す際は、聞き手か話し手か、男か女か、に関係なく相手に接近した距離を取るそうです。
エドワード・ホールによる研究の中で、人には4種類の距離帯があるとされていますが、恋人の距離、友達の距離、会社の同僚の距離など、人はパーソナルスペースを臨機応変に伸縮させます。
例えば、恋人同士は45cm以内の密接距離を使い、社交上の付き合いをする人には210~600cm以内の社会距離を使う。
つまり二人の距離が近くなるほど、より好意的な関係があることを意味し、まだ親密な関係でなくても、その距離に違和感なく入り込めれば、相手に好意を持ってもらえる可能性があると考えられます。
接近することは、相手に自分をさらけ出す行為であり、接触、におい、体温といったコミュニケーションを許容することになるのです。
また、パーソナルスペースの距離を見れば、その人たちがすごく親密な関係なのか、意外と仲の良くない関係なのか、などが推測できるといわれています。
近くで誉めて遠くで批判
心理学では近くにいるだけで相手に好印象を与えることができる事が分かっています。
例えば60~240cmまでの距離で見知らぬ人と話し合う実験では、相手が遠くに座っていたときほど、社会的な積極性が乏しいと評価されました。
逆に言えば、近くで話すことにより、積極的な印象を持ってもらえると考えられるのです。
しかし、他の研究によると単純に近くにいれば好意的に思われるわけではないとの結果も。
2人が交代でパズルに挑戦する実験。
2人が座る位置は60cmか150cmのいずれか、2人の内の1人は「さくら」。
被験者(サクラではない人)がパズルに挑戦して失敗したとき、もう一方の人物(サクラ)がそれを好意的あるいは否定的に評価し、実験の後でサクラであった人物の印象を調べたもの。
結果はサクラが好意的な評価をした場合、評価された人の近くに座っていた人の方が良い印象を持たれました。
サクラが否定的な評価をした場合、評価された人から遠くに座っていた人の方が比較的良い印象を持をもたれました。
近くに座るということは、その人に好意を持っていると受け取られやすく、その人が他人であるよりも友人である方が、より近くで評価された方が、良いも悪いも含めて大きな影響を受ける事が分かっています。
一方で、遠い距離から批判的な事を言われると、「本音で言っている」と思われ、ある意味「良い印象」を持つことがありますが、逆によく批判をする人物から「好意的な印象」を持つと「何か裏があるのでは」と疑われてしまうことも考えられます。
つまり、近づいて話せば相手に積極的な印象を与えられるし、近づいて誉めれば好意を持たれる可能性があるのです。
また相手を批判するときには、遠く離れていた方が好意的に受け止められやすくなるので、近くで誉めて遠くで批判する方が得策といえます。
恋愛において、相手を批判する際は少し距離を離れて発言したり、誉めるときはできるだけ近くでする方が、より良い印象を持ってもらえることが期待できるといえるでしょう。
近くの人を好きになる
学生の頃たまたま隣の席になった異性を好きになったり、合コンなどで隣の人と仲良くなったりした経験はありませんか?
ある実験で、女性に初めて会う二人の男性と話をしてもらい、女性に二人の男性に対する好意の高さを尋ねるというものがあります。(男性一人、女性二人の場合も)
実はこの男性二人は実験のサクラであり、一人には協力者(上の文でいう女性)から50cm座った場所におり、もう一人は240cm離れた場所に座っていました。
つまり女性は近くに座る男性と、遠くに座る男性とで同時に会話をしています。
その結果、異性の場合、近くに座っていた人の方がより印象が良かったのですが、この効果は、男性だけの場合になると少しだけ表れ、女性だけの場合は全くみられなかったのです。
つまり異性間だと近くの人が好まれ、同性間ではその影響は少なくなり、単純にその人の近くにいれば好意が高まるわけではなさそうです。
ちなみに、この実験の後で、2つの向かい合ったベンチを用意し、そこに男性二人を別々の場所に座ってもらうよう指示しました。
すると約6割の女性が、実験の際に近くに座っていた男性のベンチを選んだのです。
この実験では男性二人は笑ったり、視線を合わせたりと反応の仕方、つまり会話の量が偏らないように配慮されていました。
ですが、実際の現場では、近くの人の方が会話が多くなり、場合によっては体に触れる機会も多くなったのです。
つまり近くに座る事により、話す機会が増えたり、好意を持つ機会が増えることが考えられます。
合コンなどで気になった異性がいた場合、とりあえず近くの席に座ることも大切なのかもしれませんね。
関連記事:人に好かれる人の特徴10のまとめ
親切な人に近づきたくなる
アメリカの実験で大都市、その近郊の中規模の都市、約80km離れた人口の少ない田舎町で調査された実験があります。
男性あるいは女性の実験者に、郵便局や食料品店のドアから1mの場所に立ってもらう。
通行人が3mくらいまで近づいたときに目線を合わせ、そのときの通行人の反応を調べるというもの。
大都市では約20%の人しか視線を合わせず、田舎町では80%前後の人が視線を合わせました。
また男性の実験者には35%の人が、女性の実験者には43%の人が視線を合わせたという結果が出ています。
実験者と目を合わせた通行人の年齢と、その割合からも、実験者の性別に関わらず、15歳以下と51歳以上の約半数の通行人は視線を合わせています。
特に女性の実験者と目がよくあっていたのは15歳以下の子供たちでした。
また、実際に話しかけてきた人の割合は、田舎町では26%、大都市やその近郊の都市ではわずか3%という結果になっています。
視線を合わせることが、その人に関心を持っている、あるいは親切心を表している行為だとするのならば、田舎の人の方が親切な人が多く、男性より女性、子供やお年寄りの方が他人に対して親切であると考えられます。
その他にも「人は親切な人に近づく」ということを確かめた実験がありました。
会話を始める前に、一方の人には「相手は親切な人です」と伝えておきます。
すると「不親切な人です」といわれた場合よりも、相手に近づいて話す事が分かりました。
逆に「親切にふるまってください」と伝えると、「不親切な人だと思わせてください」といわれた場合よりも、相手に近づいて話しかける事も分かっています。
つまり相手のことを「親切」であると思っている場合や、相手に「親切にふるまおう」と思った場合、その人が持っているパーソナルスペースが小さくなることが考えらます。
「よく道を聞かれる」という人は他人から「親切な人に違いない」と思われているので近づきやすくなり、「人に親切にしよう」と思っている人ほど、相手に近づいて話す機会が増えるというわけです。
友達からの印象が「親切」と思われている人ほど、あるいは人に優しく接することを心掛けている人ほど、パーソナルスペースが小さくなり、近づきやすくなり、印象も良くなるのかもしれません。
好きだから近づけない
上のように好きな人や、親しい人にはパーソナルスペースは小さくなり、近づくことが分かります。
しかし、ある実験ではそれと反対の結果が出ました。
女子学生が男子学生(サクラ)を面接し、いくつかの事柄についてインタビューするという実験。
まず女子学生には、面接をする前に男子学生が映っているビデオを見てもらい、「好感が持てる人物の印象を与えるもの」と「好きになれない印象を与えるもの」のビデオを用意。
いずれかのビデオを見てから面接をしてもらい、そのときの様子が分析されました。
結果、「好感が持てる人物」のビデオを見た場合は181cm、「好きになれない人物」は154cmだったのです。
つまり女子学生は好意を抱いた男性に対して距離を取った事になります。
これは相手の写真を見せてからお見合いをする状況と同じものだと考えられ、写真を見て好感を持った女性が、相手の近くで話すことは、抱いている好意を全面に表してしまうことになります。
初めて会う異性に対して、「馴れ馴れしい」と思われたくないがために行われた行為であると考えられるわけです。
逆に好きになれないという印象を持った男性に対し、遠くから話すと、好意がないことを露骨に相手に伝えてしまいます。
また、好きではないことが伝わってしまうと、インタビューに答えてもらえないという恐れもあり、より近い距離で話したものと推測されます。
また、男子学生に好意的な印象を持った女子学生は、会話の際、相手との距離を大きくとり、話し始めに視線をよく合わせ、頻繁に手を動かしました。
つまり、これらの女子学生は、距離が遠い分だけ視線を多く送り、好意的な気持を伝えようとしていたのです。
一方で、好意的でない印象を持った女子学生は、会話の距離を短く取り、話し始めのときに頻繁にうなずきました。
うなずきが多くなることは、相手の話す時間を大幅に長くすること、嘘をつこうとするときに多くなることが確かめられています。
このことから、好きになれない男子学生に接近して話した女子学生は、接近して好印象を与えようとしたが、それはあくまでインタビューに答えてもらいたいがためにしたものだと考えられるのです。
男女の場合、パーソナルスペースが近くなれば好意的に思っているとは単純に言えないようです。
関連記事:恋愛相手の気持ちが知りたい!脈ありサイン8つのまとめ
美人に対するパーソナルスペースは広い
待ち合わせなどで一人で立っていて、近くを通りすぎる人を観察すると意外なことがわかります。
ある人は体が触れ合いそうな距離で通りすぎるし、他の人は遠回りするかのように距離を取ったりします。
こうした通行人の行動を研究したものがあり、以下の条件で行われました。
- 待ち合わせをしている男性(あるいは女性)が一人
- 二人の男性が立ち話をしている状況
- 二人の男女が立ち話をしている状況
結果は、歩道に立っている人物が、女性より男性であるときの方が、立っている人数が一人よりも二人の方が、一人で立っている女性が魅力的な方が、より遠くを通りすぎたのです。
女性より男性の方が大きく距離を取られたのは、男性のパーソナルスペースの方が大きい証拠なのだといえるでしょう。
一人より二人の方が大きく距離を取ったのは、単一のパーソナルスペースより、二人が合わさったもの(社会空間)が大きいから。
また人々は、いわゆる「美人」に対して、より大きなパーソナルスペースを持っているのではないかと考えらます。
美人や芸能人、著名人などと偶然出会ったとき、近づいてはいけない理由はないはずなのに、思わず遠くで足を止めることがあります。
これもその人が持っている魅力や、一般的に「オーラ」と呼ばれるようなものが、パーソナルスペースと関係しているのではないかと言われています。
ちなみに女性には特有のパーソナルスペースがあり、アメリカの心理学者サンダースは、成人女性には特有のパーソナルスペースの変化があるとしています。
これは、女性の性周期の中ほどで、男性により接近するというもの。
妊娠する可能性がピークになる時期に男性に対するパーソナルスペースが小さくなるのは、生物学的な理由によるものだろうと考えられています。
こうした研究により、パーソナルスペースというものが単純なものではなく、その人の性別、文化、生物学的状態などから様々な影響を受けるものだと考えられるわけです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
このようなパーソナルスペースを知ることで、相手が自分の事をどう思っているのか?自分自身がどのようなパーソナルスペースを持っているのか?などのヒントになると考えられます。
また、パーソナルスペースはまだまだ未解明な部分もたくさんあり「近くにいれば好きになる」のような単純なものではないことが分かったと思います。
しかし男女の恋愛において、パーソナルスペースから得られる知識や経験もあるかと思いますし、読んでいただいた方に少しでも恋愛の参考になれば幸いです。
もし多くの方に読んでいただけるようでしたら、随時、記事の更新をしていきたいと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。
(使用している人物や風景の画像と本文は関係はありません)
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