燃え尽き症候群の症状と対処3ステップ

あんなに仕事熱心だったのにも関わらず、急に無気力になる。ただ上から言われることを処理するのに疲れてしまった。人員は削減され、仕事量は増え、職場の人間関係も冷え切っている。燃え尽き症候群とは文字通り、疲労や無気力といったことから「燃え尽きたような感情」に陥ることを意味します。

一般的に燃え尽き症候群は「個人の問題」として扱われることが多いようですが、ここでは職場環境の改善という見解から「燃え尽き症候群の症状や原因、対処する方法」をご紹介していきたいと思います。(構成は以下のようになっています)

 

  1. 燃え尽き症候群3つの症状
  2. 燃え尽き症候群が起きる6つの原因
  3. 燃え尽き症候群に対処するための3ステップ
  4. 燃え尽き症候群に立ち向かうために

 

急な無気力感に襲われないためにも、職場のストレス原因を追究するためにも、燃え尽き症候群を予防するためにも、参考にしていただけたら幸いです。個人的な問題と考えるのではなく、同じ症状を抱えている同僚の理解、組織の協力を得て、解決策を導き出していただけたらと思います。

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1.燃え尽き症候群3つの症状

燃え尽き症候群3つの症状

 

 

1-1.熱意の欠如

燃え尽きると人はどうような症状を表すのか?

仕事を始めた当初はやる気に溢れていたのに、今は何を目標にして頑張ればいいか分からない。給料は減る一方なのに、仕事量は増すばかりで休みもろくに取れない。自分はやりたい仕事も、それをこなす能力も持っている、だけど会社はそれを任せてくれない。言い方に違いはありますが、基本的にみな言っていることは同じです。

まず燃え尽き症候群の症状の一つとしてあるのが「熱意の欠如」です。誰しも燃え尽きてから仕事を始めるのではなく、今の仕事に魅力を感じているかどうかは別として、少なくとも仕事内容に見合った報酬と安定を期待して始めます。もちろん、最初からその仕事に情熱をもって取り組める幸運な人もいるでしょう。

熱意とは燃え尽き症候群に相反する感情であり、徐々に仕事に対する熱意は失われ、仕事にかける時間と努力を惜しむようになります。例えば教えることに情熱を持った教師がいたとしましょう。周囲からの評価も素晴らしく、生徒からの信頼も厚い。しかし、勤務時間外の労働があまりにも多く、どんなに頑張っても給料は上がらない。そう感じるようになれば、自分の熱意とは裏腹に、実際の仕事との間に価値観のズレが生じ、必要最低限の仕事だけをこなすようになるかもしれません。

 

1-2.感情的な落ち込み

二つ目にある症状は「感情的な落ち込み」です。不満と怒りが典型的な燃え尽き症候群の感情であり、自分が掲げた目標が遠のくばかりでストレスを感じ始めます。任された仕事を処理する能力に欠けている、あるいは自分には決定権がないことから、思ったような結果を残せない。

成果の出せない内容から、それに対する報酬や評価は下がり、自分はダメな人間なのだと思い込むようになる。費やした時間と努力が無駄なものであり、感じている疲れが空しいものに思えてくる。その疲れが慢性的に感じるようになると、自分の欲求が満たされないことから、失敗を他人のせいにする、批判をするといった攻撃的な一面を見せることもあるでしょう。

自分が一生懸命に働いているにも関わらず、恥をかかされたり、自尊心を傷つけられると、周囲に敵意を持つようになります。仕事のやりがいどころではなく、非生産的な行動に出ることもしばしばです。会社の金を着服する、店の品物を万引きする、後輩をいじめる、などといったように。

また、このような負の感情だけが問題なのではなく、肯定的な正の感情を持てないことも問題です。人が情熱を持って仕事に取り組むと、チャレンジする喜び、達成感、良好な人間関係、自信が生まれます。こうした正の感情は、負の感情を打消します。しかし、肯定的な感情が衰退してしまうと、否定的な感情は打ち消されることなく、不信感や敵意となって表れるのです。

 

1-3.個人の問題として考える

燃え尽き症候群は、個人の行動や感情に分かりやすく表れるため「個人的な問題」だと周囲から思われがちです。むしろ社会人としての責任感から、自分自身で解決すべき問題だと考えている人も多いのではないでしょうか。そういった見解からしてみれば、燃え尽き症候群にかかる人は「か弱い人間」だ、あるいは、単に自分の不満を表に出している「わがままな人間」だ、ということになるでしょう。もしかしたら、仕事ではなく家庭の問題が原因だ!などと決めつけてくる人も出てくるかもしれません。

こういった考え方が広まった背景には、燃え尽き症候群にかかった人たちが個人的な経験としてカウンセラーに語ったり、仕事を辞めてから自分の力だけで解決策を見出そうとしたことがあるかもしれません。

たしかに、燃え尽き症候群を個人の問題として経験しますし、その予防策や克服法を自分で見つけることも可能です。ですが、燃え尽き症候群の発生原因が、その人だけにあるかと言えば、そうではありません。

燃え尽き症候群は個人の枠を超えて、労働環境に深く根付いているということです。つまり、燃え尽きてしまう原因は、か弱い人間だから、わがままな人間だから、内向的な性格だから、ましてやコミュニケーションスキルに欠陥があるから、とは言い切れないのです。

 

2.燃え尽き症候群が起きる6つの原因

燃え尽き症候群が起きる6つの原因

 

 

2-1.仕事量の増加

会社にとって仕事量とは生産性を、社員にとっては時間とエネルギーの消費を意味します。効率的な仕事をするためにも、両者が納得するラインを設定することが必要だと言えるでしょう。ですが、会社が無理に生産性を高めようとすれば、それは社員の過度な労働へと繋がるのは目に見えています。

不況から人員削減が行われれば、以前よりも少ない人数で同じ仕事量を、ひどい場合はそれ以上の成果を求められます。そういった場合、より効率的な作業方法を取ること、不必要な作業を排除できることが必要不可欠です。しかしながら、それらの処置が行われるのは極めて稀であり、実際には現場で働く人たちの労働時間や努力が犠牲になっています。

四六時中、その日のうちに終わらせなければならない仕事に追われ、食事を取る時間もままならず、残業を終えても家に帰ってパソコンを開いて作業を続ける。一見して組織の生産性が向上しているかのように思えますが、それはあくまで一時的なものであり、実際にはプライベートな時間を費やしているに過ぎません。

こうした職場環境から、疲労は慢性的なものになり、休日にも関わらず心からのんびりすることもできなくなります。それが原因で健康的な問題が表れたとしても、いつクビにされるかわからない不安、あるいは同僚に対する申し訳ない気持ちから、休むことが怖くなることも。

 

2-2.決定権を与えられない

優先順位を決められること、目標を達成するための方法を選べること、予算の使い道を決定できることは、積極的に仕事に取り組む姿勢を作り出すことができます。反対に、与えられた仕事だけを、ただただこなす日々は苦痛なものであり「自分の力ではどうすることもできない」と無気力になってしまうものです。

もちろん、全ての物事を思いのままに動かせる人など存在しません。独裁された組織が良い結果を残せないことは誰もが承知の事実であり、仮にそれが会社のトップであったとしても、組織の一部を思い通りに動かせると自覚できていれば、恵まれている方だと言えます。

自分の仕事をしていく上で、ある程度の決定権を持ってコントロールできる事は欠かせません。もしも仕事の重要な場面で、物事を決定できる権限を与えられていないのであれば、疲労感は増し、仕事にやりがいを感じられず、無気力に襲われることになります。

 

2-3.見返りが少ない

仕事が増えて見返りの収入が減れば、さも自分が費やした時間と努力が評価されていないと感じようになるでしょう。大規模なリストラを行う企業は、財政難であると同時に、他者との競争で生き残るために必死になります。仕事の効率化や無駄な作業の削減をする前に、賃金コストを抑えるための非正規雇用を増やすのに躍起になるかもしれません。

また組織のスリム化によって、昇進の機会が減少傾向にあるのも見逃せません。中間管理職の仕事は消え、そのしわ寄せの多くは平社員にのしかかります。組織の中で重要なポストを得る望みを持てないことは、明らかな積極性の減少に繋がるはずです。

さらに問題なのは、収入やポストといった直接的な見返りよりも、内面的な仕事に対する充実感という見返りを得られないことにあります。人は得意な仕事をしているとき、自分の能力が正当に評価され、またそれが周囲の役に立っていることを実感できます。持ち前の技術と経験を活かして、自分や自分のチームでしか作れないものに誇りを持ちます。

しかし、組織体制が不十分である結果、人員は常に入れ替わり、会社の方針もコロコロ変わる、おまけに適材適所ではない仕事の割り振りをされれば、人間関係は希薄なものとなり、満足のいく結果を残せなくなるのも当然でしょう。

 

2-4.希薄な人間関係

組織の中で働くことは、属している人々と繋がることであり、個人としての経験を形作るためにも繋がりは必要不可欠なものです。しかし、職の安定が保たれなくなると、組織は平気で人との関わりあいを弱めるような政策を打ち出してきます。短期的な収益を追い求めるあまり、今働いている職場は一時的なものでしかく、周囲と深く関わろうともしなくなるでしょう。

人間関係が希薄になり、人との繋がりが感じられなくなると、ただ冷たい職場環境になるだけではなく、お互いの足を引っ張り合うという非生産的な行動が表れることが多々あります。これは職場の人間だけの問題ではなく、組織にとっても大きな損失です。

共に力を合わせ働いているという強い意識がなければ、対立は強くなり、怒りや苦しみに満ちた職場となってしまいます。本来、目標を達成するために費やすエネルギーが、争いながら仕事をすることに使われ、何とも非効率的な職場環境になってしまうのです。

 

2-5.不公平さ

信頼関係を築くことができている職場は、自分の意見をハッキリと伝えることができ、お互いを尊重しているものです。会社が社員に対して公平な行動を取れるようになると、社員たちは自分の価値を高めることができ、積極的に仕事に関わろうとすることができます。反対に、不公平な行動を取られると、燃え尽き症候群を引き起こす原因になると考えられています。

では、なぜ組織は不公平な行動を取るようになってしまうのか?まず一つ目に考えられるのが、公平さは目に見えないものであり、重要視されにくいことがあります。社員の気持ちなど全く考えていないとも思える行動に出るのも、お互いを尊重し合える職場に時間とお金をかけるよりも、分かりやすく利益に繋がる業務に投資するからです。

二つ目に秘密主義があります。大きく変動する市場、競合社の存在などによって、会社のトップはなかなか計画をハッキリと伝えようとはしません。それは何か隠さなければならない不純な動機があるのかもしれませんし、もしかしたら、経営者自身が何をすべきか分かっていない場合もあります。

身の回りで起こっていることについて、上から何一つ説明されなければ不信感を募らせるばかりです。収益ばかり追い求める姿勢は、必然的に人をどう操作するかという何とも冷たい行動になって表れます。

 

2-6.価値観のズレ

熱意の持った社員と、短期的な利益を追い求める企業の間には、しばしば「価値観のズレ」が生じます。特に納得できないと感じるのは、会社が優れたサービスをうたいながら、それとは反対に仕事の質を低下させるような行動を取るときでしょう。もちろん、企業側も故意に業務の質を低下させているわけではなく、ただ単にそこに目が行き届かない、あるいは目を向ける余裕すら無い場合もあります。

また会社が経費削減のために行ったことが、サービスの質の低下を招くことも多々あります。社員や従業員に対してのメリットは少なく、むしろ顧客の不満を第一線で受け止めなくてはならないなど、本来必要のなかった業務が増えることもあるはずです。

そういったことが当たり前のようになると、現場で働く社員と企業との間に大きな価値観のズレが生じてきます。「会社が打ち出す方針や目標と、実際に行われていることがあまりにズレていると感じています。顧客サービスの質を向上させると言いながら、人員削減で人手は減る一方だし、余計な仕事も増えている。私にはどうしても会社が顧客を満足させようとしているのではなく、ただ経費を削減したいのだとしか思えません。」といったように。

 

3.燃え尽き症候群に対処するための3ステップ

燃え尽き症候群に対処するための3ステップ

 

 

3-1.周囲の協力を得る

ここまでお伝えしてきたように、燃え尽き症候群に対処するための鍵は職場環境にあります。これに対応するためには、燃え尽きが個人の問題ではなく、周囲の人々にも影響を及ぼしていることを伝え、協力を得ることが必要不可欠です。

そして、それを先導するには確固たる決意とリーダーシップが要求されます。その人物は自分かもしれませんし、理解のある上司かもしれません。周囲を巻き込んで職場環境の問題点を探り出そうとするのは非常に勇気のいることです。ですが、自分と同じように燃え尽き症候群を引き起こしている同僚の意見を聞くことで、具体的な問題点を導き出すことができます。

例えば、多すぎる仕事量が大きな問題である場合、適切な労働力や時間の見直し、最も優先されるべき内容を検討する必要があるでしょう。決定権を与えられず、思うような結果を残せていないと感じているのなら、抱いていた理想と現実の違いは何なのか?会社にとっても良い結果をもたらす方法はないのか?共感してくれる同僚が力になってくれるはずです。

 

3-2.組織の中で実行に移す

上の方で述べた「燃え尽き症候群を引き起こす6つの原因」のうち、全てを同時に改善する必要はありませんが、特に目立った問題点から意識して取り組むことで、自然と他の要素の改善にも繋がるはずです。そして、考え出された解決策を組織の中で実行できるようにならなければなりません。つまり、具体的な提案を会社に示し、問題がもたらす不利益を明確にするのです。

もちろん、訴えかける方法は一つではないでしょう。それは他の社員たちの意見をまとめて経営者側に提出することかもしれませんし、もっと効率的に仕事をこなす方法を示すこと、あるいは問題が引き起こす不利益を確かな数字として表すことかもしれません。

ただし、この段階において大きなリスクを覚悟する必要があります。理解ある経営者が社員の要望を聞き入れ、全面的に改善に協力してくれる場合もあれば、ただの不満の声としか受け止めず、権力を乱用して脅して来たり、くだらない嫌がらせをしてくる場合もあるからです。

 

3-3. 継続して取り組む意識を持つ

上手く組織の協力を得られ、実行できたとしても、これで全て解決というわけではありません。燃え尽き症候群は、目に見えて改善に向かっていると分かるまで時間を要します。また、改善していく中で、新たな問題が見つかることもあるでしょう。

大切なことは「燃え尽き症候群の改善に継続して取り組むこと」です。その後の自分や社員の感情を観察する、アンケートを取る、話し合いの場を定期的に持つ、あるいは改善策がもたらした利益や恩恵をまとめて組織に提出することもできるはずです。

「燃え尽き症候群は個人の問題であり、組織が介入する必要はない」という誤解を解くことができれば、企業は安定して事業を行うことができ、社員は熱意を持って仕事に取り組むことができるはずです。燃え尽き症候群は労働者に精神的なツケを、企業には目に見えない経済的な損失をもたらします。両者が理解を示し、互いに歩み寄る道を模索することができれば、新たな燃え尽き症候群の犠牲者が生まれることもないでしょう。

 

4.燃え尽き症候群に立ち向かうために

燃え尽き症候群に立ち向かうために

誤解がないようお伝えしたいのは、「一人の時間を持つ」とか「休息を取る」といった自分を向上させることが燃え尽き症候群には効果がないということではありません。もちろん、健康的な体を作ることも、精神的安定を保つための感情を養うことも、大いに役に立つはずです。しかし、根本的な燃え尽き症候群の原因を解決するには、個人と職場の両方に目を向ける必要があるということです。

自分の力で燃え尽くことを予防、解決できたとしても、同じく燃え尽きそうになっている周囲の人々が対処できるとは限りません。職場環境の問題ではなく、個人の問題であると捉えた場合、おそらく「燃え尽き症候群になる」→「個人の力で解決する」→「周囲が燃え尽いている」→「燃え尽き症候群が再発する」といった負のスパイラルが起こるはずです。ひどい場合だと、これを繰り返すたびに症状が悪化することもあるでしょう。

転職すれば燃え尽くこともなく再スタートできるかもしれません、引きこもればストレスを抱え込むこともないでしょう。ですが、個人から始まり、周囲の協力を得て、職場環境を良くすることができることが理想的なはずです。個人と組織が人間的価値を重要視することができれば、短期的な収益以上の財産を得ることができます。

以上が「燃え尽き症候群の症状と対処3ステップ」になります。仕事で燃え尽きる前に、あるいは燃え尽くことを予防するために、少しでも参考にしていただけたら幸いです。最後までご覧いただきありがとうございました。

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