キノコの一種である「ワライタケ」を食べると一般的には笑いが止まらなくなるといわれているが、本当にキノコを食べただけで、そのような症状が出るのだろうか?

ワライタケのイラスト

キノコ学者の川村清一さん著書の「食用菌及び有害菌」の中でワライタケを食べた夫婦の記載がある。

それによると、大正6年に石川県で事件は起こった。

隣人からもらったキノコをワライタケと知らずに夕食として食べてしまった夫婦がいて、食べた後に二人とも酩酊状態になり、怒ったり、笑ったり、歌ったりしたという。

妻の方は恥ずかしげもなく素っ裸になり、三味線を弾くマネをしながら踊ったりと数時間にもわたって大騒ぎした。

しかし、医師による診断では脈拍は正常で、腹痛や嘔吐もなく、体温も平熱であったという。深夜には二人とも眠りにつき、翌朝には二日酔いのような症状が出たという。

この記述によると、ワライタケを食べると本当に笑う場合もあるようだ。一説では笑いを止めたくても、止められなくなるので、実は笑っている本人は苦しいのだともいわれているそうだ。

マジックマッシュルームはシャーマンの儀式に使われていた

以前は規制の対象外で、未成年者の乱用が社会問題となったマジックマッシュルーム。現在では麻薬原料植物に指定され、無許可での栽培や採集が禁じられている。

実はこのマジックマッシュルームは意外なところから世に知れ渡った。

それはあるアメリカ人実業家がメキシコ山中のネイティブアメリカンの村で体験したキノコを使用したシャーマンの儀式での出来事。

シャーマンから与えられたキノコを口にすると、色彩ある幾何学模様や、アーケードのある宮殿、馬車をひく神話の動物などの光景を次々に見たという。

やがて彼は魂の部屋から抜け出し、山々の風景を見下ろし、そこを進んで行くラクダのキャラバンまで見えたという。

その後の調査によって、この儀式に使われたテオナナカトルというキノコは複数の種類のキノコが混ざったものだと判明し、その中のシロシビンという成分が幻覚作用を引き起こすこともわかった。

シロシビンは幻覚を生じさせるだけでなく、体温や血圧の上昇、瞳孔の散大、脱力感、くちびるのしびれ、呼吸や脈拍を速めたりといった作用を及ぼす。

ときには精神的緊張や不安感からパニック状態に陥ることもある。幻覚によって自傷行為に及んだり、服用して何週間もたってからフラッシュバックに襲われるというケースも報告されている。

このシロシビンを含むキノコ類(ワライタケ・ヒカゲシビレタケなど)を総称してマジックマッシュルームと呼ばれるようになった。

 お酒と一緒に食べると必ず二日酔いになるキノコ

秋の味覚といえばキノコ、このキノコの中にはお酒と一緒に食べることによって必ず二日酔いになってしまうキノコがあるのをご存じだろうか?

それは「ヒトヨタケ」。

ヒトヨタケのイラスト

春から秋にかけて草地や畑に生える灰色のキノコで、地面に生えたかと思えば、一夜にして、傘が黒くなり溶けてしまうことから「ヒトヨタケ」の名前がついた。

このヒトヨタケ、毒キノコかと思われたかもしれないが、れっきとした食用で、お吸い物の具にしたり、酢の物にしてもおいしい。

しかし、お酒と一緒に食べることに注意しなければならないのだ。

ヒトヨタケに含まれているコプリンという成分は、消化管の中でアミノシクロプロパノールという物質に分解される。この物質は、アルコールから生じるアセトアルデヒドを分解する酵素の働きを阻害してしまうのだという。

そのためアセトアルデヒドが分解されずに血中に蓄積して二日酔いのような症状を引き起こすのである。重症の場合は、昏睡状態に陥ってしまうこともある。

これは酒に強い弱いに関係なく、ヒトヨタケと一緒にお酒を飲んだら、必ず悪酔いしてしまう。酒豪だと自負している人でも注意が必要なのだ。

その他にも食用とされているスギタケやホテイシメジ、ウラベニイロガワリといったキノコもコプリンを含んでいるので、間違ってもお酒と一緒に食べないように注意しよう。万が一、間違って食べてしまったら、とにかく吐いて、胃の内容物を出すことをおすすめする。

食べたくてたまらない毒キノコ!?

おとぎ話や童話の挿絵などに登場する傘が赤く白い斑点模様の毒キノコがあるが、これはベニテングタケというれっきとした毒キノコである。

しかし、毒キノコでありながら、ベニテングタケは古代から宗教的に重要なモノとして扱われてきた。

それはインドなどをはじめ、世界各国でベニテングタケを食べることによって見える幻覚が宗教と結びつけられてきたからで、シベリアのシャーマンなども伝統的にこのキノコを宗教儀式に用いてきた。

このベニテングタケを食べると、涙やヨダレが止まらなくなり、血圧や視力の低下などが起きる。幻覚を喚起する作用もあり、現在でも危険ドラッグとして出回り社会問題となっている。

ではこの毒キノコ、食べた場合、命の危険に陥ることはあるのだろうか?

ベニテングタケと同じテングタケ科に属するタマゴテングタケやドクツルタケなどは、少量でも肝臓や腎臓に激しい障害を引き起こす。

ところが、ベニテングタケには重篤な症状を起こすペプチド系の猛毒が含まれていないので、ベニテングタケを1~2本食べたからといって死ぬことはないとされている。

このベニテングタケにはイボテン酸、ムシモール(イボテン酸の分解産物)などが含まれており、神経伝達物質であるグルタミン酸とよく似た構造をしている。

しかもこのイボテン酸にはうま味成分があり、グルタミン酸の10倍以上もあるという。

つまりベニテングタケは非常に高いうま味を持った毒キノコなのだ。その美味にひかれて、中毒覚悟でベニテングタケを食べたいという人もいるほど。

ちなみにイボテン酸の水溶液をハエがなめると動けなくなることから、ハエ取り用の薬剤としても利用されたこともある。

また、アルコールに溶けやすいことから酒の酔いを深める効果があり、ロシアでは、ウォッカとベニテングタケを一緒に食べることで酔いを深めることもあるという。

しかしながら命に危険はないとしても、脳機能を低下させたり、幻覚を見たり、錯乱状態になる危険な毒キノコに変わりないので間違っても食べてみようと思わないように。

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