インフルエンザ対策

冬になると流行するインフルエンザ、今回は意外と知られていないお医者さんがやっている9つのインフルエンザ予防と対処法についてご紹介。ラインナップは以下のようになっている。

  1. 朝起きてすぐに歯磨き
  2. 1日20分ほど日光浴をする
  3. キノコ類を食べる
  4. ガムを噛む
  5. マスクの正しい付け方
  6. お店では壁際に座る
  7. 枕元1m以内に加湿器を置く
  8. 20分に一度水を飲む
  9. インフルエンザについての疑問

 

1.朝起きてすぐに歯磨き

高齢者を対象に、口腔ケアをしっかりやった患者さんと、あまり口腔ケアをしていない患者さんの2つに分けたグループを検討した結果がある。

すると口腔ケアをしっかりやった患者さんの方がインフルエンザの発症が明らかに抑えられた。

しかも当初のデータではその割合は10分の1まで抑えられたという。

では、なぜ歯磨きをすることでインフルエンザ予防になるのか?

夜のうちに口の中にはバイ菌が溜まりやすいので、うがいをしたり歯磨きをするのは非常に効果的。

口の中のバイ菌はいろいろな酵素を出し、その酵素が粘膜を傷つけるとウイルスが付着しやすくなってしまうので、ウイルス感染に限らず細菌感染を含めてとても歯磨きは大事

また、家族で使っている歯ブラシを同じ歯ブラシ立てにおいている方も多いとは思うが、インフルエンザだけではなくノロウイルスなどもうつる可能性があるのできっちり分けておいた方がいいという。

2.1日20分ほど日光浴をする

これは体の中にある成分を作り出すため、それはビタミンD。

ビタミンDはインフルエンザを予防するという研究もされており、ビタミンDを体の中に取り込む方法は2つある。

ひとつは食事から、もうひとつは日光に当たることによって生成される。

しかも体の中のビタミンDの8~9割は日光に当たることによって作られていて、一番効果的だといわれているし、安上がりでもあり、ビタミンDを自然に上げる方法なのだ。

女性の場合だと日焼けを気にして日焼け止めを塗ってしまうかもしれないが、ビタミンD生成という意味では塗らない方がいい。

どうしても日焼けが気になってしまう方は、手のひらからでも効果はあるといわれているので、ぜひ1日20分ほどの日光浴で免疫の力を高めよう。

3.キノコ類を食べる

ビタミンDを食事で補うために、シイタケなどのキノコ類を食べると効果的。

キノコの中にはプロビタミンDというビタミンDになる前の物質を含んでいる。

プロビタミンDをとり日光を浴びることによって体の中でビタミンDが作られる。

ビタミンDが免疫力を高めるということは研究によって分かっているので食事の中でキノコ類をしっかりとると良いというわけだ。

また一般的にビタミンCは風邪に効くといわれているが、インフルエンザにも効くのだろうか?

実はビタミンCが風邪に効くかどうかの論文がいくつか出ていて、それらを束ねた論文によるとインフルエンザや風邪を抑える効果は無いという。中には風邪に対して予防効果も症状も抑えていないとう論文まであるのだ。

4.ガムを噛む

これはガムを噛んだときに出る唾液が重要で、唾液はいろいろな免疫物質を含んでおり、口から入ってくる病気を予防する作用があるため。

Igaという免疫グロブリンをはじめ、いろいろな免疫物があり、唾液を豊富に出すということは非常に体にとっても大切。

赤ん坊が唾液をたくさん出すのも、それによっていろいろな病気を防いでいるのだという。

口腔内をキレイにする歯磨きと同じで、口腔内の雑菌等を減らすのにガムを噛むことは有効で、その他にも唾液を多く出す食べ物にはアメやスルメなどもあり同じ効果が期待できるのだ。

5.マスクの正しい付け方

私たちが風邪予防やインフルエンザ対策につけるマスク、このマスクの付け方を間違えてしまうとその効果はマスクをしていない状態とほぼ同じになってしまう。

マスクをつけることによって期待できることは2つあり、ひとつには保湿効果がある。

普段は気道の中は乾いているので粘膜が弱まる、気道の粘膜には細かい毛が生えていて、病原体を口の方に排除するのだが、乾燥によってその機能は落ちてしまう。

マスクを付け、気道を保湿することによって気道の機能を高めることができる。

もうひとつは自分が病気にかかっていた場合に他の人にうつさないということ。

以上のような事がマスクをすることによって期待できるのだが、やはり気になるのはマスクの正しいつけ方だろう。そこでお医者さんがやっているマスクの付け方をご紹介。

1.最初に折る(マスクを付けてから折ってしまうと反発力で隙間ができてしまう)

マスクの正しい付け方1

2.鼻のあたる部分を谷折りにする

マスクの正しい付け方2

3.ゴムひもを一回小さく結ぶ

マスクの正しい付け方3

特に鼻・あご・頬の3か所が漏れやすい部分なので気をつけよう。

6.お店では壁際に座る

食堂やカフェにいる時は目の前に知らない人がいる席に座らないようにして壁に向かって一人で座る。

そうすることによって目の前からインフルエンザが飛んでくることはなくなり、また横も1メートルくらい離れた方がいいという。

特にインフルエンザ予防として注意しておきたいのが不特定多数の人が利用する場所だ。

例えば銀行のATM、自動販売機、エレベーター、エスカレーターなど、日常生活で最も汚染されているという意味ではスマートフォンや携帯電話などもある。

対処法として有効なのはアルコール消毒、アルコール消毒液を吹きかけたタオルやアルコールティッシュなどで軽く拭くだけでもインフルエンザウイルスには十分効果はある。

しかしノロウイルスにはアルコール消毒は効かないので、その場合は物理的に手洗いなどをして落とすしかない。

また最もリスクが高い環境だといわれているのが電車。

不特定多数の人が常に入れ替わり、せきをした際に口を手で押さえ、そのままつり革や金属棒を触ったりしてウイルスが付着する。

座っていて目の前の人がクシャミをすればそれだけで付着する可能性もあるのだ。

7.枕元1m以内に加湿器を置く

空気が乾燥していることが問題なので湿度を保つことが大事になる。

特に寝ているときは無意識のうちに呼吸をしているので、枕元から1m以内に加湿器などを置いて、湿度を約50~60%を目安に保つ。

小さい加湿器で遠くに離して置いてしまうと湿度を保てないので、できるだけ近くに置いた方が良い、また加湿器がない場合でも濡れたタオルなどを使うことも有効。

なぜインフルエンザ対策に湿度が重要なのかというと、乾いている状況の方がウイルスは長生きしてしまうから。

湿度を約50~60%に保った部屋なら6時間後には数%にまでインフルエンザウイルスは激減する。

またインフルエンザにかかっている人がいる場合でも加湿をしっかりしておくと、ウイルスが広がらなくてすむ可能性がある。

加湿器の掃除はとても大事

加湿器をほったらかしにしておくと中にカビが生えて、加湿器を使えば使うほどカビをまき散らしてしまう危険性がある。また加湿器肺という病気もあり、これは汚れた加湿器の水分を吸引することによって発症するアレルギー性の肺炎。加湿器に付属している説明書どおりに定期的にしっかり掃除することが大事なのだ。

8.20分に一度水を飲む

マスクの付け方でも話したように、冬になると乾燥した喉のウイルスや細菌に対する抵抗力が落ちるため、喉の保湿をする。

また喉に付いたウイルスや細菌を水を飲むことによって嚥下(えんげ)し、飲み込んで胃の中に落とし込む。

胃酸の酸度は非常に強いものなので、ウイルスや細菌の多くは死滅すると想定できるのだ。

20分に一度少しずつ水を飲み、喉を潤す効果と胃酸によるウイルス殺菌の効果が期待できる。

9.インフルエンザについての疑問

最後に今さら聞けないインフルエンザの素朴な疑問について。

毎年のように流行しているインフルエンザにはどのような感染の仕方があるのか?どのような場所が危険なのか?どれくらい期間が経てば仕事に復帰できるか?などなど。

インフルエンザと風邪の見分け方は?

典型的な症状があれば見分けることが可能だという。

風邪は病原体が山ほどあってウイルスだと100~200種類ほど。

風邪の典型的な症状は、のどの痛み、鼻水、くしゃみ、せき、など口周りの症状が特徴で1週間くらいで治まる。

インフルエンザの典型的な症状は38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛など、全身の症状が突然現れる。

一気に高熱が出て倒れたりするなど強い症状が出るのが典型的。

ではなぜ風邪と違ってインフルエンザは急に発症状が悪化するのか?

それはインフルエンザウイルスの驚異的な増殖スピードに関係がある。

インフルエンザに比べて風邪の増殖は遅い。

ウイルスは細胞がないと生きていけないので、人間の細胞にくっついて、そこから増殖する。

ひとつのウイルスにかかると8時間後には1個→100個、16時間後には100個→1万個、24時間後には1万個→100万個にまで達する。

冬になると一気に流行するのは、この驚異的な増殖率が関係しているわけだ。

かかる人とかからない人の違いは?

自己管理の問題でもあるが、最近では科学的に血液を調べることによって分かる。

かかった事が無いと言っている人でも、ちゃんと調べてみるとインフルエンザにかかった形跡がよくみつかるという。

検査方法は採取した血液に数種類のインフルエンザウイルスを入れ、体の中の防御システムである抗体があるかどうかを調べる。

本人の自覚症状が無いだけで、軽い熱だと思っていたのが実はインフルエンザだったなんてことも分かるし、この検査によって抗体が無いインフルエンザの種類も判明するという。

インフルエンザの症状の特徴として非常に強いものだと話したが、中には軽い症状で治まってしまう人もいる。

そのため軽い症状だと思って手洗いやうがいをしないと、知らず知らずのうちにインフルエンザウイルスをまき散らしてしまうこともあるのだ。

インフルエンザウイルスはどれくらい生きている?

せきやクシャミなどで出た後インフルエンザウイルスが生きていられるのは8~12時間程度だといわれている。

出た後の場所が本当にキレイなところに付くと1~2日も居続ける。

汚れている場所というのはウイルスを分解する酵素も存在するのでそのような結果になるようだ。

インフルエンザの感染経路は?

大きく分けて2種類あり、飛沫感染と接触感染がある。

飛沫感染はせきやくしゃみによって飛び散るウイルスを含んだしぶきによって起こる感染。

接触感染はウイルスの付着した人や物が接触して起こる感染のこと。

予防接種(ワクチン)はなぜ毎年うけなければならない?

一定に効くワクチンというものはまだできてなく、相手方のインフルエンザが毎年マイナーチェンジする。

インフルエンザウイルスはすぐに変異し、毎年ウイルスの型が変わるのでワクチンもそれに合わせて変える必要がある。

毎年、次のシーズンにどの型が流行するか予測して使用するワクチンを決める。

日本の場合だと2月ごろに決まり、一斉に作り始めて次の冬のシーズンに準備するのだ。

また予防接種をうけたにもかかわらずインフルエンザにかかったなんて人もいるとは思うが、その理由には以下の3つが考えられる。

  • 予想が外れる
  • 抗体に個人差がある
  • 製造過程でウイルスが変異し違うワクチンができる

ワクチンの製造段階において、卵にインフルエンザウイルスを接種し培養するときに、ウイルスが増えている間に変異してしまうことがある。

2012~2013年のインフルエンザワクチンの予防効果が低下したのは、この製造過程におけるウイルスの変異が原因だといわれている。

ワクチンを打てば絶対にインフルエンザにかからないというわけではなく、ワクチンの本当の意味は重症化を防ぐことにある。

乳幼児で20~50%ぐらいの流行率発病を抑え、65歳以上の高齢者の場合は死亡率を8割ほど抑えることができる(重篤な基礎疾患のある方のワクチン接種は危険)。

ワクチンを打たないことで死亡してしまうお年寄りが100人いるとして、その人たちがもしワクチンを打っていたら80人が助かるというわけだ。

重症化を防ぐというのは、入院をしなくても済む、死ななくても済む、そういう意味ではインフルエンザワクチンは非常に有効なのだ。

インフルエンザ薬はどれが一番いい?

現在インフルエンザの薬は4種類出ていて、その効果はほとんど同じ。

病院が処方する薬の種類は、飲み薬タイプ1種類、吸入タイプ2種類、点滴タイプが1種類。

効果は同じなのになぜ使い分けるのかというと、患者さんの年齢や状況によって適切なものを選ぶため。

飲み薬は5日間服用(1日2回)で、飲んでしまえば勝手に体の中で吸収される。

吸入タイプは1回吸入すればOK、しかし、ちゃんと吸えるかどうかがポイントになってくる。

しっかり吸える人には吸入剤を、小さな子供や高齢者には飲み薬を、意識が薄れている人には点滴を、という具合に患者さんの状態に合わせて最良のものを選んでいるのだ。

またインフルエンザ薬は予防薬としても使用されており、吸入薬も飲み薬も予防薬として承認されている。

しかし受験前だから飲もう!という話にはならない。

非常に体が弱っている人でワクチンも打てずに働いている方が、家にいる高齢者にうつさないようにする場合などだ。

予防薬として使える人の条件(医師による判断が必要)

  • 65歳以上
  • 慢性呼吸器疾患患者
  • 糖尿病患者
  • 腎機能障害患者など

風邪薬はインフルエンザに効果はあるの?

残念なことに風邪薬はインフルエンザウイルスに関しては意味がない。

熱を下げる効果はあるので、症状を和らげる場合があるがインフルエンザ自体に効き目はない。

つまりインフルエンザをただの風邪だと思って風邪薬を服用し、たまたま熱だけが下がってしまい治ったと勘違いしてしまうと、外出先で周囲にウイルスを拡散させてしまう危険性がある。

だからこそインフルエンザは専用の薬を飲むことが重要になってくるわけだが、インフルエンザ薬にも注意点がある。

インフルエンザ薬の働きはウイルスの増殖を抑えるためであって、殺しはしない。

ウイルスが増えすぎると意味がない。

熱が出たのを発病と考えて48時間以内に薬を飲むことが基本で、それ以上になってしまうと抑えきれないという。

つまりインフルエンザかな?と感じたらすぐに病院に行って、素早い対処がとても大事なのだ。

どれくらい休めば仕事復帰できる?

学校保健安全法で決まっている期間は、発病後5日、解熱後2日をクリアした後。

発病日を0日と考えるので、5日経ってもウイルスが残っている可能性がある。

すぐに熱が下がったとしても5日間は絶対に休み、最短でも6日目以降に仕事に復帰できるといわれている。復帰後も他の人にうつさないようにマスクをしたり手洗いをちゃんとする必要があるのだ。

今後のインフルエンザ治療はどうなる?

治療薬は新しいものが作られていて、最近では日本で作られた薬がエボラの特効薬として海外で使用されたこともある。

現在ある4種類の薬はウイルスを増えるのを抑え、飛び出てくるところをブロックするだけだが、直接ウイルスに作用するものが出てきた。

新型インフルエンザが出てきたときに使おうと思っていたものが、エボラにも効果があると分かってきたので、フランスやアメリカで臨床試験が始まっている段階だという。

今後もインフルエンザに直接作用するものが新しく出てくると思われ、ワクチンもどんどんよくなることが期待されている。

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