童話「アリとキリギリス」でも登場するように、怠け者のキリギリスを横目にせっせと働く働きアリ。
イメージとして、働き者で女王アリに尽くすイメージがあるが、実は全員がまじめに働いているとは限らない。
北海道大学大学院農学研究科の調査グループによると働きアリの中には仕事をしない怠け者が存在するという。
働きアリの主な仕事は、エサの採取、卵や女王アリのグルーミング(猫でいうところの毛繕い)、ゴミ捨てなどがあり、絶えず仕事をしている。
ところが調査グループがアリを5か月間観察し続けたところ、全体のおよそ2割のアリは先ほどの仕事をいっさいせずに、巣の中をウロチョロしたり、自分をグルーミングするだけだったという。
また食事に関しても、他のアリが持ってきたものを口移しでもらうという、いわばアリのニートのような存在だ。
このニートの割合は、この調査した巣だけに当てはまるものではなく、すべての集団において同じで、怠け者のアリだけを取り出してみても、その習性は変わることなく、全く働かないという。
そしてこの働きアリの法則においておもしろいのが、優秀な働きアリだけを集めても集団全体の生産性は最大にならない点。
つまり、怠け者のアリがいることによって、何らかの意味があるかもしれないということだ。
人間社会にもアリの法則は当てはまる!?
また驚くことにこのアリの法則は、人間の集団においても同じだという。
2:6:2の法則と呼ばれていて、集団の2割は率先してリーダーシップを取り、6割の人はそれにつられてやる気を出す、そして残りの2割は働かなるというのだ。
また働かない2割を取り除いたとしても、新しく編成した集団の2割はまた働かなくなるという。
これはスポーツの分野でも当てはまることで、お金をかけて10割をスター選手で揃えても、それに見合った成果は得られないそうだ。
つまりどんな集団でもこの2:6:2の比率は変わらずに、「働く2割」「つられる6割」「働かない2割」で構成される。
職場で「俺がいなければこの会社はダメになる」と感じている人も、実は単に「働く2割」にいるだけで、仮にいなくなっても新しく代わりが生まれるかもしれないのだ。
個人的にはあまり賛同したくない「アリの法則」だが、生物学上なんらかの関連があるかもしれないと感じるのも事実だろう。
過労死する働きアリ、長生きする働かないアリ
琉球大学農学部の辻教授による調査で働きアリの中で生存率が下がる過労死があることを発見した。
これは働かないアリの割合を変えた巣をいくつか用意し、2か月ほど飼育して観察するという実験から判明したという。
実験の結果、働きアリは巣の中の働かないアリの割合が増えるごとに多く働くようになり過労死する傾向がみれた。
一方で働かないアリは働くアリよりも生存率が高く多くの子供を残せるが、働かないアリのみで形成された巣では子を残すことができないことがわかった。
働かないアリが多い巣では、働きアリがその分の穴埋めをするように頻繁に巣の外で働き、その結果「過労死」ともいえる早死をしてしまうのだ。
先ほどのアリの法則【2:6:2の法則】からすると、働くアリのみで構成されてもその比率は変わらないとしたが、アリの社会では「働かないアリ」のみで形成されると巣ごと崩壊してしまう。
働かないアリは何らかの意味をもっているようだが、それだけでは成り立たないようだ。
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