満員電車とパーソナルスペース

毎日の満員電車、客の回転を重視した狭い店、私たちは生活していく上で様々な場所でストレスを感じている。

日本の国土面積に対する人口の割合は世界の235国中21位と上位に入り、特に都心は人口が集中しているため、人口密度は高い。

実は、私たち人間は、動物と同じように「なわばり」を持っていて、それを「パーソナルスペース」と呼んでいる。

そしてこのパーソナルスペースは大きく公衆距離、社会距離、固体距離、密接距離の4つのグループに分類され、その中で近い距離と遠い距離の2つがある。

  1. 公衆距離(遠)・・・750cm以上離れていて、一対一では会話をすることができない距離。
  2. 公衆距離(近)・・・360~750cmの範囲で、一対一で会話することができるギリギリの距離。
  3. 社会距離(遠)・・・210~360cm。ビジネスの会話をする距離で、これ以上離れると、ビジネスの会話をしていても説得力がなくなる。
  4. 社会距離(近)・・・120~210cm。相手に触れることができない距離で、この距離から人を見下ろすと、相手に強い威圧感を与える。
  5. 個体距離(遠)・・・75~120cm。「友人の距離」とも呼ばれ、友人同士なら、ここまで近づいても不快には思われない距離。
  6. 個体距離(近)・・・45~75cm。相手に少し触れることができる距離。異性の場合は、友人以上恋人未満の距離。
  7. 密接距離(遠)・・・15~45cm。自由に相手の体に触れることができる距離。恋人や家族以外でこれ以上近づくとストレスに感じてしまう。
  8. 密接距離(近)・・・15cm未満。肉体関係のある異性や、よい関係の家族以外には入ることができない。

また、話している相手が視線を変えたり、体の向きを変えたりすることは「私のパーソナルスペースに入ってきてますよ」という無言のメッセージではないかといわれている。

性別によってもパーソナルスペースの範囲の形状は異なり、男性は軸を後方に置いた前方に向いた細長い卵型、女性は円の中心を軸とした円形になるそうだ。

また恋人になりたいと思ったら、できるだけパーソナルスペースを近づける方が効果的で、上の6番目の近い個体距離にあたる範囲が良いとされている。

お酒を飲むときに隣合うようにカウンター席に座ったり、近づいて一緒に写真を撮ることで、親近感を作ることができるだろう。

しかし、近づき過ぎると7番目の遠い密接距離になってしまうので注意しよう。

また身近なところでパーソナルスペースを実感するのがエレベーター

狭いエレベーター内で、複数の他人がいる場合、エレベーターの階数をじっと見つめたりすることはないだろうか?

これは、自分のパーソナルスペースに見知らぬ人が入り込んでいるストレスを紛らわすために何か他のことに集中している行為だといわれている。

 

混雑している店ほど行きたくなる社会心理学

行列が長く続いているほどおいしいに違いないと思い込んだり、お店の中がお客で賑わってるほどおいしそうに見えると感じたことはないだろうか?

これは社会心理学が関係していて、社会心理学とは社会的環境の中で個人や集団がどんな行動をするか研究している分野で、私たちが生活している日常で身近に感じる心理学ともいえる。

例えば社会心理学者のミルグラムが行った実験に以下のようなものがある。

ニューヨークの、とある場所に数人のサクラを立たせて、ビルを見上げてもらった。

サクラの数が2~3人のときでは立ち止まる通行人の割合は6割ほどに達した。

さらにサクラの数が5人以上になると、驚くことに見上げる通行人の割合は8割にまで増え、あっという間に大きな人だかりになったという。

これは人の「知らないと不安になる心理」を利用したもので、周りの人たちは何が起こっているのか知っているのに、自分だけが知らないことを不安と感じるようだ。

逆に言えば、周りの人と同じ行動をすることで安心感や連帯感を得られる。そのため数人のサクラを立たせただけで多く人だかりを作ることができたというわけだ。

この社会心理学を利用して、行列を意図的に作ったり、わざとレジを少なく配置して混むようにしているお店もあるらしい。

しかし、サクラだとバレたときには同時にそのお店の信用も失うことにもなるのでハイリスクな商法だともいえるだろう。

その他にも下の問題を見せて同じ長さの直線を答えてもらう実験があった。

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(2)の直線が同じ長さというのはよく見ればわかると思う。

10人の被験者に順番に端から答えてもらうのだが、実は始めの9人はサクラで最後の1人だけが被験者。サクラがあきらかに間違った答えをすると最後の被験者のほとんどが同じように間違った回答をしてしまうという。

また集団の数によっても心理的な影響も変化することがわかっている。

ある実験で、ひとつの部屋に火事のような煙を発生させ被験者がどのような行動を起こすか観察した。

少人数のグループで実験したところ、どこから煙が出ているのか様子を見に行ったり、リーダーシップをとってグループをまとめたりする光景がみられたという。

しかし、人数が多いグループになると他の誰かが統率するのを待ったり、不安な気持ちを抑制しているような表情が伺えたたという。

これらのように人は周りの人間を気にしてしまう心理を備えており、またその人数によっても行動に変化が起きてしまう。相手の気持ちや、気分を特に気にする日本人は、このような社会心理が顕著に表れるのかもしれない。

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